−prologue−
意識の奥。奥底で美しい女性と会った。
俺ではない誰かが俺の中にいた。
何かの前に女性は立っていた。そう、それは「door」だ。
透明なそれは俺の中に疑問を持たずにあった。それがそこにあって、女性がそこにいるのが自然のような気がした。
『あなたの「door」を開けてあげる』
女性の声が響く。声ではなく意識かもしれないが、そんなこと今の俺にはどうでもいいことだった。
「door」がなんなのか、聞かなくてもわかるような気がした。それは誰もが持っているもので、持っている事に気がつかないもの。
心の中の一番奥にあるもの。それを女性は開けてくれると言った。
俺は女性の言葉を受け入れた。
楽になりたかった。自由になりたいと叫ぶ自分がいた。
何から逃れたいの、抜け出したいのかわからないまま俺は叫んだ。
女性が静かに微笑む。それは罪に汚れた我が子を慈しむような笑みだった。
「door」が開く。欲望が「door」からあふれ出るのを感じた。それを手に入れた俺は歓喜の雄叫びをあげた。これが俺の求めていたもの、手に入れたかったもの。
そこには何が潜んでいたのか。そう、それは…