君からのメールを見ると苦笑してしまう。
 だってそこには君の想いが溢れんばかり詰め込まれているから。

 君にメルアドを教えた時すごく喜んだから驚いた。正直大袈裟だなとちょっと引いたりもして。
 だけどそれからのメールの数や言葉であの喜びはちっとも大袈裟なことではなかったとわかった。
 わかった後にわざと、
「メルアド知った時演技して大袈裟に喜んだだろ」
 なんて意地悪に茶化した。
「あれは俺の本心なの!」
 すねたような返事メールに「そうだろうね」って心の中で頷いたのは君には内緒。
 直接的な言葉はなかったけれど君の想いにはすぐ気付いた。こんなに好かれているなんて、きっとメールをしなかったら俺は知らないままだったね。
 それから多くのメールを重ねた。ひとつひとつが君からのラブレター。
 自分を見て。自分を好きになって。俺の想いに気づいて。
 少し重い君のメールもはじめは苦しかったけど、だんだんと心地良くなった。
 滅多にメールを返さないことで有名な俺が君へのメールだけはこまめに返す姿を自分でもおかしいと思ったり。
 だけど今ではすっかり君の想いにやられてしまった。
「すっかりうつされた。どう責任とるつもりだよ?」
 君が戸惑うのを承知で突然こんなメールを送った。
 俺はもう君のせいで重症になっていたから。
「…怒ってるの?」
「怒ってない。ただこの症状は君のせいだ」
「…症状?病気?」
「医者にも治せない病気。もう手遅れだね。君のせいだ」
 君の混乱が伝わるようで俺は返事を待ったまま小さく微笑んだ。さあ、はやく返事をちょうだい。
「なんの病気?」
 素早くメールを打つ。
「恋の病。君のメールからうつったんだ」
 送信。
 少し間が空いて返事がくる。
「恋愛感染だね」
 その通り。
 責任とってもらうからな。
 この病、治せるのは君だけだ。



(終)

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